【電子書籍化決定】婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
愛しい人と見つめ合って頬を赤らめている姿も、冗談を言いながら悪ふざけをしながら肩を組む姿も……羨ましいとは思ったけれど、縁遠いものだと思っていた。
(……何故、俺はこんなに空虚なのだろうか)
自分が空っぽの存在だと見せつけられているようだった。
そんな自分を隠す為に、常に笑みを浮かべていた。
この対応が更に自分の評判を押し上げているとも知らずに……。
(退屈だ……)
感情を押し込んでいくうちに自分がどんな人間だったのかを忘れていった。
このまま時間が過ぎていくのかと思うとゾッとした。
何を言われても、どんなに褒められても心に響かなくなっていく。
果たして自分にどんな価値があるのだろうか。
何でも持っているはずなのに何も持っていない……詰まらない日々を過ごしていたが、責任を果たす為に此処から抜け出そうとは思わなかった。
そんな自分の気持ちを幼馴染のリロイだけは見抜いていたのかもしれない。
毎回、予想もしないトラブルを起こしたりサプライズをしては驚かせてくれた。