【電子書籍化決定】婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
マルクルスとは直接関わった事がないが、嫌な気持ちが込み上げてきた。
微笑んだルビーにマルクルスは先程の鬼のような表情が一瞬で引っ込んで態度が急に変わり、しおらしくなる。
よく見るとマルクルスのルビーへの態度は、かなり分かり易いものがあるのではないだろうか?
(この男は本当にジュリエット嬢が好きなのか……?)
とてもそうには見えなかった。
「二人とも何をしていたの……?まさか喧嘩?」
二人が普段からどういうやりとりをしているのか、ジュリエットがどう思っているのかは分からないが、言い争う事は珍しいのだろうか。
すると、マルクルスが焦った様子で声を上げる。
「っ、そんな事ありませんよ!」
「でもジュリエットは"助けて"と……」
「この僕がルビー様の大切な妹を傷つけることなど有り得ませんよ!ははっ」
明らかに様子がおかしい。
マルクルスがジュリエットの腕を引く。
「さぁ、行こう……ジュリエット。向こうでゆっくりと話そうか」
「嫌よッ!!」
「ジュリエット、ルビー様を困らせてはいけないよ」
ジュリエットは必死に抵抗する姿を見て二人の間に入ろうとした時だった。
「ーールビーお姉様、聞いて下さいッ!マルクルス様は先程、わたくしと婚約したのはルビーお姉様に近付く為だって言ったんです!!!最低のクズ野郎なんです!!」