【電子書籍化決定】婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
「え……!?」

「なっ……違います」

「許せませんッ!今すぐに婚約を解消したいのです!手伝って下さい」


途中で被せるようにして声を上げたジュリエットは、ルビーに必死に訴えかける。
それは婚約者であるマルクルスが、ルビーに近付く為にジュリエットを利用したという内容だった。

しかし先程、ルビーとの会話内容を思い出しながら思っていた。
あわよくばジュリエットに近付けたらとルビーを利用しようとした自分の事を……。

『最低のクズ野郎』『許せません』

グサグサと次々に刺さる鋭い矢のようなジュリエットの言葉に大ダメージを受けながらフラリとよろめいた。

(たまたま未遂ではあったが、俺もジュリエット嬢に近づく為にルビー嬢を利用しようと……!)

そして顔色の悪くなったルビーは口元を押さえながらチラリと此方に視線を送っている。
その視線は『助けて』と訴えかけているように思えたし、実際にそうしようと思ったが、先程のジュリエットが言った言葉がぐるぐると頭を巡っていた。

(俺は……なんて最低な奴なんだ)

ジュリエット嬢はポカンとしながら此方を見ているが、それすら分からない程にショックを受けていると目の前で繰り広げられている口論に現実に引き戻される。
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