【電子書籍化決定】婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
なんとか声は出せたものの、動揺からかその手はガタガタ震えていた。
目があった瞬間、照れから視線は明後日の方向へ。
じっ……とジュリエットから見られていると思うと、今までにないくらい毛穴から汗が吹き出していくのを感じていた。

そして細くて折れそうな手首を掴んでいる自分の手……ジュリエットに触れていると認識した瞬間、心臓が口から飛び出してしまう程にドコドコと音を立てていた。

(こっ、こ、ここは冷静にならなければ……!)

理性をフル動員してチラリとジュリエットを見た。
そしてルビーの言葉と視線の意味を思い出して、自分がやらなければいけない事を思い出す。


「今の話を聞いて……大体の状況は把握した。あとは私が話をつけよう……」

「へ…………?」

「ジュリエット嬢の悪いようにはならない。安心してくれ」


『何で、殿下が……?』
そんな心の声がここまでは伝わってくるような気がした。
彼女はルビーに助けてもらおうとしていたにも関わらず、ついつい出しゃばってしまった。
脳は今までにないくらいパニックを起こしていたが、長年の経験からなのか外から見ると冷静に対応しているように見えただろう。
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