【電子書籍化決定】婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
すると、マルクルスは此方の姿を認識したのか借りてきた猫のように一瞬にして大人しくなった。
そんな彼に追い討ちを掛けるような出来事が起こる。
隣にいるルビーからメラメラと静かな怒りの炎が燃えている事に気が付いた。
彼女は鋭くマルクルスを睨みつけているようだ。


「マルクルス様……」

「な、何でしょう……!!ルビー様」

「わたくしの大切な妹を悲しませるなんて……最低ですわ」

「ーーー!!」

「二度とお顔を拝見したくありませんわ」

「ッ……!」


ルビーの言葉を聞いたマルクルスはその場で膝から崩れ落ちた。
その反応には此方も吃驚である。

(あの噂はやはり本当だったのか……!)

どうやらこの様子を見ると、マルクルスは本当にルビーに近づく為にジュリエットと婚約したようだ。

(そんな邪な気持ちでジュリエット嬢の気持ちを踏み躙るなんて許せない!…………だが、俺も)

マルクルスはモイセスによって、ずるずると引き摺られながら連れて行かれてしまった。

その後は、ジュリエットの為に出来ることを全てしてあげたいと思ったが、王家がカイネラ子爵家だけに過度に肩入れする訳にはいかなかった。
しかし自分で見聞きした事が大きく役に立ったようで、出来る範囲で精一杯動いていた。
実際にラドゥル伯爵家は相手が子爵家なのをいい事に好き勝手しようとしたようだが、それを未然に防ぐ事が出来た。
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