キミの次に愛してる【BL】
十一
「あ、それから。再婚するんだったら、僕、ここ出て行かなきゃね」
「えっ……」
何を、と否定しようとする義兄に、「そりゃそうでしょ」と背中を向けたままで言う。
「邪魔じゃないか、僕。新しい奥さんだって――……」
――ガンッ!!!
壁を叩く、物凄い音がした。
弾かれるように振り返ると、壁に拳をあてたままの裕文さんが、俯いていた。
「……俺は……キミのこと……。大切だと思っている。これ以上ないくらい……。――本当の、弟のように。……見合いしても、浩次君が出て行く必要なんてない。例え――この先、何があったとしても……此処は、キミの家だから。俺は、キミの、兄だから……」
そのまま、背を向けた裕文さんの顔が、見えない。
「ごめん。今日、仕事持ち帰ってるから……。夕飯出来たら、呼んでくれるかな」
いつもの調子に声を戻した裕文さんは、僕を見る事なく、僕に謝るチャンスもくれず、リビングを出て行ってしまった。