キミの次に愛してる【BL】

 翌日の土曜日。

 僕は義兄の裕文さんと買物に出掛けていた。

 案の定と言おうか。お人好しの裕文さんは、自分の服はそこそこに、僕の服選びに奮闘している。

「なんでも良いですよ」

「ダメダメ。ちゃんと格好良い服着なきゃ、せっかくの男前が台無しだよ」

 ――男前なのはあなたです。

 そう返したかったが、言ったら最後、顔から火を吹くだろうから止めにした。

「浩次君は青より黒の方が似合うかなぁ? 黒に赤や紫っていう組み合わせもあるよねぇ」

 うーん、どうしようかなぁ…と、真剣に悩んでくれている。

 裕文さんはいつだって、こんな感じだ。

 僕が遠慮しないように、 僕が肩身の狭い思いをしないように、いつでも気を遣ってくれている。

「服なんて、本当にいらない」



 その代わり、あなたとずっと一緒に居たい――。



 僕がそう言ったなら、この人はどうするんだろうか。

「いいよ」

 なんて、きっと言うんだろう。

 僕の『本当の望み』にも気付かずに、ずっと義兄として、僕の傍に居続けてくれるのだ。

 それでも――いいかなぁ。

 なんて思ってしまう僕は、いつからこんな『寂しがりや』になってしまったんだろう……。

 自嘲気味に、笑ってしまう。

「バカだな、僕は。こんなの、姉さんに合わせる顔なんてないじゃないか」



 いつまで経っても、裕文さんは僕の『姉さんの旦那さん』で。

 どんなにご飯作りを頑張っても、僕は裕文さんにとって『妻の弟』だ。



 この関係は、変わる筈もない。



 いつだって僕達の間には、姉さんが必要だ。

 姉さん越しの、関係。 



「お義兄さん」

 まだ真剣に悩んでくれている裕文さんに、僕は笑顔を浮かべる。

「ん?」

「お腹、すきました」
< 4 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop