キミの次に愛してる【BL】
九
「ただいま」
いつものように、仕事から帰った義兄はキッチンにいる僕に笑顔で声をかける。
そうして和室に行ってから、自室に入る。
――姉さんに手を合わせてから、あの、見合い写真のある自室に行くんだ……。
そう考えて、自嘲気味に笑ってしまう。
姉さんに託けて、嫉妬してる自分を誤魔化そうとしているのだ。
「バカ……みたい……」
独りポツリと呟いた僕の声は、とても空しくキッチンの床に落ちていった。
「今日の晩御飯は何かなぁ?」
着替えてリビングに戻ってきた裕文さんが、呑気に問いかけてくる。
「今日はしょうが焼きと、ポテトサラダ。豆腐の味噌汁……」
僕の沈んだ声にも気付かずに、裕文さんは「やった!」とご機嫌だ。
「浩次君のポテトサラダは美味しいからなぁ」
「そんな事……ないですよ……」
口先だけで返事をしながら、なんとも言えない、苛立ちだけが心に溜まっていく。
それは重くて。息苦しささえ感じてしまう。
――言っちゃ、ダメだ……。
解っていたのに。
僕の口は、親の言う事を聞かない駄々っ子のように、勝手に声を発していた。
「お義兄さん」