「仕事に行きたくない」と婚約者が言うので
 ――いつまでもウジウジしてんじゃねーよ。男のくせに。このきのこ頭のチンチクリンが!!

 と、叫んでしまった。ということを思い出した。
 あのときのヘラルダ。実は、剣技会に参加したいと思っていた子供の一人。二つ年上の兄は、この剣技会に参加する。異国間交流の一つとして。そのために、このティンホーベン国を訪れていたのだ。
 だが、ヘラルダは参加できないと言われた。理由は性別によるもの。だから、男というだけで剣技会に参加できるきのこ頭のチンチクリンが羨ましいと思ったのだ。参加できる権利があるだけでも、有難いと思え、と。

「あのとき、君は泣きそうな顔をしていた。理由は知らなかったけれど、後で兄上たちの話を聞いて知った」

 ――リンドナ国の王女は、剣技に優れているらしい。見たかったな。

 ――ですが、剣技会に参加できるのは男のみですからね。見ましたか? 彼女の顔。悔しそうにしておりましたよ。

 ――もしかしたら、この味噌っかすよりも強いかもしれないな。

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