「仕事に行きたくない」と婚約者が言うので
 マンフレットは、こいこいといつものように右手を振って、ヘラルダを呼び寄せる。ヘラルダがマンフレットの目の前に立てば、彼はいつものようにぎゅっと抱き着く。

「マンフレット様。何か誤解をされているようなのですが」

「何?」

 ヘラルダのちょうど下乳の谷間の終わりに顔を埋めていたマンフレットは、そのまま顔だけあげてきた。

「私は、別に味噌っかすの第三王子であるマンフレット様が好きというわけではありません。マンフレット様だから、好きなのです。ですから、何もわざわざ私の前で味噌っかすの振りをする必要はありませんよ? 甘えたいときに好きに甘えてください」

 みるみるうちにマンフレットの表情が強張っていく。

「え、そうなの?」

 なぁんだ、と言うかのようにマンフレットはヘラルダの手を引いて、自分の膝の上に彼女を座らせた。

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