大蛇の花嫁
家には返してもらえなくても、外の景色が見たい。そう思ったのだ。

(ほんの少しだけ……)

桃の白く華奢な手が大きな門に触れる。その瞬間、桃の体は優しく跳ね返されてしまった。まるで、門が桃が通るのを拒んでいるようだ。

「えっ……」

「結界を張ってある。お前は我の許可がなければ、ここからは出られんぞ?」

驚く桃をオロチが背後から抱き締め、耳元で囁く。抱き締める力は強くなっていき、まるで締め付けられているような感覚を覚えた。

「何故、我から離れようとする?ここにいれば、お前は何もしなくていいのだぞ?豪華な着物も、おいしい食べ物も、暇潰しができるものも何でも揃っている。ここを出たい理由がわからんのだが」

「その、外の景色を少し見たいからです。このお屋敷からは外の様子が見えなくて……それで……」

桃が恐怖と緊張を覚えながら言うと、オロチは「そうか」と呟く。刹那、桃の体は抱き上げられた。

「では、少しだけ外の様子を見せてやろう」
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