大蛇の花嫁
オロチがそう微笑みながら言うと、風が二人を包み込む。そして、オロチはふわりと宙に浮いた。

「ッ！」

驚いて桃がオロチの首に腕を回してしがみつくと、彼は幸せそうに目を細める。高度はどんどん上がっていき、遠くの景色まではっきりと見えるようになった。その時、桃はあることに気付く。

「一体、ここはどこなのですか？」

遠くにあったはずの桃の住んでいた町は、空に届いてしまいそうなほど高い建物が多く並んでいる。まるで、異世界に迷い込んでしまったかのようだ。

オロチは答えることなくその建物がある場所へと近付いていく。近くに行けば行くほど桃は混乱していった。

道を行き交う人たちの服装や髪型は桃が目にしたことのないもので、鉄の塊のようなものがたくさん走っている。人々が食べているものや飲んでいるものも、桃が知っているものではなかった。

ドクドクと嫌な予感が桃の中に生まれていく。オロチは満足げに笑った後、口を開いた。
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