大蛇の花嫁
太陽の光に照らされて煌めく銀色の長い髪に、翠玉を思わせる美しい緑の目、豪華な宝飾が施された着物を見に包み、ジッと桃を見つめている。芸者のように華やかな顔立ちだ。

「あなたは……」

「ヤマタノオロチだ」

即答され、桃は信じられないと言いたげな目で彼を見つめる。ヤマタノオロチとは、八つの頭を持った恐ろしい大蛇だ。このような美しい人の姿をしているはずがない。

桃の心を見透かしたようにオロチはフッと笑い、桃の手を取ってその甲に唇を落とした。突然のことに桃の頬が赤く染まると、オロチは桃を抱き寄せて耳元で囁く。

「我々にはいくつもの姿がある。好きな姿に自分を変えられるのだ。そして、お前は生贄ではなく我の嫁だ。お前以外は何もいらぬ。そばにいろ。お前を連れ去ろうとする輩がいれば、その時はーーー」

耳にキスを落とされ、混乱した桃はオロチの腕の中で気を失ってしまった。



長い川が真横に流れる中、桃は歩いていた。オロチに生贄として差し出される数年前、まだ桃が幼かった頃である。

買い物を母から頼まれた桃は、財布の入ったかばんを手に八百屋へと向かっていた。その時、桃の視界に意地悪そうな顔をした三人の男子が映る。三人は地面をニヤニヤしながら見つめ、手に持った木の枝を振り下ろしていた。
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