お嬢様、今宵は私の腕の中で。
スマホデビュー
「────っ、夢……」
身体中を支配する寒さにぶるりと身震いして、重たい瞼を上げる。
目の前には青い空が広がっていて、昨夜星空を眺めたまま、結局眠ってしまったのだとようやく気づいた。
また同じ夢。
けれど、今回は少し新しい場面を見ることができた。
といっても、この夢の内容が過去にあったことなのか、はたまた空想のものなのか知る由もないので、こんなことに一喜一憂するのはほとんど無駄と言っても過言ではないけれど。
それでも、完全にこの夢が空想だと断言できないわたしがいた。
「つき、くん……」
夢の中のわたしが叫んだ名前。
いったい、誰の名前なのだろう。
そんな名前の人聞いたことないし、当然会ったことも思い当たる人もいない。
けれどやけに現実味のある夢だった。
まるで自分が体験しているように胸は痛くなったし、涙を流した感覚すら残っている。
「疲れる夢、だったな……」
息を吐いて、ふと気づく。
吹きつける秋風は冷たくて、一晩外で夜を明かしたということもあってか、身体中が凍えるように寒い。
けれど、左手だけが妙にあたたかくて、そっと視線を落とす。