お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「あの……今日は学園でお姿がみえなくて、とても残念でしたの」
リムジンに揺られながら、姫乃さんが頬を赤く染めて九重に告げた。
姫乃さんの言葉に、九重はゆるりと頬を緩めて微笑む。
「実は、今日はこちらを買いにいっていたのです」
「え?」
す、と差し出されたものに目を落とすと、それは白いスマートフォンだった。
「旦那様から、お申し付けがありまして。どうやらお嬢様がお願いされたのだとか」
「あ、そうだった」
以前三春さんとお茶会をしたときに話題になって、その後お父様に頼んでおいたのだった。
「失礼ながら、使い方は、おそらく分かりませんよね」
控えめに訊ねられて、恥ずかしさに襲われながらこくりとうなずく。