お嬢様、今宵は私の腕の中で。

「それで、すずさん」


一通りお菓子を食べ終えた後。

姫乃さんはティーカップを置いて、わたしに向き直った。



「連絡先を交換しましょ」

「あ、うん」


と頷いたはいいものの、交換の仕方がよく分からないけれど。


わたしの表情を見て、姫乃さんは苦笑した。



「スマホ、貸してもらえる?」

「あ、うん」



素直に差し出す。

姫乃さんは器用に何度か画面をタップして、それからわたしにスマホを戻した。


「レイン、ちゃんと入ってるんだね」

「レイン……?」

「チャットアプリのこと」


説明されてもそれが何なのかよく分からないけれど、画面を見るとそこには【姫乃】という文字の横に猫の写真が載っていた。



「これは?」

「うちで飼っている猫のむぎ。とっても可愛くていい子なの。レインはね、アイコンっていうのを自分で決められるんだけど、すずさんは何にする?」

「アイコン……」


駄目だ。全く分からない。

横文字だらけで頭がパンクしてしまう。

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