お嬢様、今宵は私の腕の中で。
2人だけのホワイトクリスマス
年の瀬が近付く12月半ば。
パーティーのことを考えるだけで憂鬱だけど、それより先に重大なイベントがある。
自室にて。
今日も今日とて美しい微笑を浮かべる九重に向き直る。
「ねえ九重。わたし、行ってみたいところがあるんだけど」
「可能な限り尽力致します」
ふうっと深呼吸をひとつ。
よし、気持ちは落ち着いた。
「九重。もうすぐクリスマスでしょう?」
「ええ、そうですね」
うなずいた九重に一歩近付いて、その青い瞳をまっすぐに見つめる。
「それでね。わたし、クリスマスイブに街に行きたいの」
「街、ですか」
「そう。毎年クリスマスイブやクリスマス当日は自室にこもって1人で過ごす、っていう感じだったんだけど。本当はわたし、みんなみたいに出かけたいの!」
お願い、と顔の前で手を合わせると、九重は怪訝そうに眉を寄せた。
「みんな、って。誰に何を吹き込まれたのですか」
「それは、その」
「晶様ですか?……目が泳いでます。晶様なのですね」
あっさりバレてしまったので諦めてうなずく。
わたしがこの考えに至ったのは、この間九重繋がりで連絡先を交換した晶さんから届いた一通のメールがきっかけだった。
【すずは九重さんとデートしないの?】
わたしと九重は恋人ではないので"デート"にはならないけれど、それから次々と送られてくる"クリスマス"の魅力にものすごく興味を惹かれて。
九重は毎日わたしの御付きをして大変な思いをたくさんしてるだろうから、クリスマスくらいは普段のお礼の気持ちを込めて楽しませてあげたいなって。
「クリスマスとなると人が多いですし、さすがに旦那様の許可なしでというわけにはいきませんね」
「そんな……」
お父様が簡単に首を縦に振るわけないよ。