お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「まったく……お嬢様は、狡いです」
「へっ……?」
「可愛らしいことばかりおっしゃって。私にどれほどの我慢を強いるのですか」
額に手を当てて俯く九重。
その顔は見えないけれど、耳が僅かに赤くなっている。
「だからね、九重。クリスマスイブの日、予定空けておいてね!」
「……空けるもなにも、もともと予定など入っておりません」
若干の甘さを含んだ声が耳に届く。
「交渉、お願いね!」
「そういうことなら、死んでも了承を得て参ります」
「なんか物騒な言葉が聞こえたけどっ」
「気のせいですよ、お嬢様」
そう言った九重は、今までで1番艶やかに、笑った。