お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「これは?」
「これだと胸元が開きすぎて寒いじゃん。冬だよ?真冬だよ?」
「マフラー巻けばいいじゃん」
「何言ってんの。普通にダメでしょ」
「ん?……あーね、そっか」
うーんと唸りながら服装を考えてくれる2人には感謝しかない。
その横で、三春さんと雪乃さんはメイク道具の確認や香水のにおいを確かめていた。
晶さんと瑠夏さんは服、雪乃さんはメイク、三春さんはヘアスタイルと香水を担当してくれるようだ。
流行に疎いわたしにとって、これほど心強いものはない。
「ねー、すず。これが着たい、とか希望がある?」
「いや、とくには」
「まじかー」
どうしよ、とまた顔を見合わせる2人。
「いや、ね。ウチらの中で、すずってワンピースのイメージが強いんだよ」
「うんうん」
「家の中でも、動きやすいつくりで生地もさらっとしたワンピースが多いでしょ?今とかもほら」
瑠夏さんに指摘されて見下ろすと、確かに今日の服装も藤色のワンピースだった。
「だから"普段と違う"ところを九重さんには見せたいわけ」
「そうそう。でも、デートにスカート系は捨てられないよねって」
「で、でーと……!?」
声を上げると、晶さんが笑いながらわたしの背中をバシンと叩く。