お嬢様、今宵は私の腕の中で。

「今さら違うとかほざくつもりじゃないでしょうね。デートはデート。訂正はしない!」

「でも……」

「何のためにあたしたちがこんなに頑張ってると思ってるの。気合い入れていきなさい、すず」


ふん、と鼻を鳴らした晶さん。


「……分かった。じゃあ、頑張る」

「うん。頑張って」


頷いて言う晶さんは、「あー、どうしよ」とまた声を上げながら服選びに戻った。


派手な柄の服を何着も手に取って、瑠夏さんと選考している。



「あ」



ふと、その動作を見ていて思いついたことがあった。


思わず声を上げる。



「ん?」

「どした?」



2人が振り返ってわたしに視線を移す。


三春さんと雪乃さんも手を止めてわたしを見た。


あった。あったよ。


ひとつだけ、たったひとつだけ。


わたしの希望が。



すうっと深呼吸をひとつして、4人に向き直る。


「あの、わたしね────」



その言葉を聞いて、4人は目を見合わせ、それから柔らかく笑った。

< 176 / 321 >

この作品をシェア

pagetop