お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「今さら違うとかほざくつもりじゃないでしょうね。デートはデート。訂正はしない!」
「でも……」
「何のためにあたしたちがこんなに頑張ってると思ってるの。気合い入れていきなさい、すず」
ふん、と鼻を鳴らした晶さん。
「……分かった。じゃあ、頑張る」
「うん。頑張って」
頷いて言う晶さんは、「あー、どうしよ」とまた声を上げながら服選びに戻った。
派手な柄の服を何着も手に取って、瑠夏さんと選考している。
「あ」
ふと、その動作を見ていて思いついたことがあった。
思わず声を上げる。
「ん?」
「どした?」
2人が振り返ってわたしに視線を移す。
三春さんと雪乃さんも手を止めてわたしを見た。
あった。あったよ。
ひとつだけ、たったひとつだけ。
わたしの希望が。
すうっと深呼吸をひとつして、4人に向き直る。
「あの、わたしね────」
その言葉を聞いて、4人は目を見合わせ、それから柔らかく笑った。