お嬢様、今宵は私の腕の中で。

「でも、どうして早く言ってくれなかったの?お洋服のくだりになったときがあったよね?」

「それは……」


もごもごと口籠った九重は、赤い顔を手で隠しながら告げた。


「お嬢様の恋人でもないのに、気付きすぎて逆に引かれないかが心配で」

「……え?」

「だって、気持ちが悪いでしょう。服やメイクならまだしも、ネイルや香水まで指摘されては」



ほら。

こういうところが不思議だ。


意味の分からないところで変な遠慮というか、なんというか。


「別にそんなこと思わないんだけど」

「なら、よかったです……」

「ていうか、逆に早く言ってもらえなかった方がわたしはショック」


腰に手を当てて言うと、九重はまた「すみません」と謝った。


「感想、聞きたいんだけどな」

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