お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「もうすぐですね、パーティー」
「うわ、一気に現実に戻さないでよ。今ちょうど雪に感動してるところなんだから」
と言いつつ、避けて通れない話題だった。
今日がクリスマスイブということは、もうすぐ年の瀬がくるということ。
わたしが恐れているパーティーが来てしまう。
「あ、ねえ九重。晶さんたちを呼んでもいいかな?」
「旦那様に交渉すれば問題ないかと」
「うんっ。また訊いてみる」
どうせなら楽しい方がいいだろう。
今までは招待するような友がいなかったため誰も呼んでいなかったけれど、今なら晶さんたちを招待できる。
そんな友達ができたことがとても嬉しい。
「今日ももう終わっちゃうね」
九重の時計を見ると、時刻はもう10時過ぎ。
いつもなら眠りについている時間だ。
「お嬢様」
近くで聞こえた声に振り向く。
どこまでも深い瞳の中にわたしがいた。
「抱きしめてもいいですか」
「えっ」
「クリスマスイブなので……特別に」
こくりと頷くと、繋いでいる手とは反対の手で引き寄せられる。
頭の後ろに手が回り、強く、けれども優しく抱きしめられた。
「……幸せです。本当に」
噛みしめるように言う九重の背中にそっと片手を回す。
わたしたちはお嬢様と執事。
それ以上でも以下でもない関係なのに。
それでも、惹かれてしまう。
どうしても抗えずに、心が動いていく。
ふわりふわりと舞い落ちる粉雪は、わたしたちの存在を包み隠すように、ただひたすらに降り続けていた。