お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「あら?すずちゃん、お化粧してるのね」
「あ、うん。お化粧が上手なお手伝いさんに少しだけしてもらったの」
「可愛いわ。シャドウが淡いピンク色。これも桜と一緒なのね」
「なになにー?すずとみーちゃん、いつの間にそんなに仲良くなったのさ」
三春さんのとなりから現れた晶さんは、その大きな猫目でわたしの瞳を覗き込んだ。
「あっれ、すず。カラコンつけてる?」
「から、こん?」
「晶ちゃん。すずちゃんはカラコンつけてないと思うわ」
「え!?裸眼でこの色素の薄さと輝き!?」
単語が難しくて、何を言っているのかよく分からない。
うーんと首を傾げているところに、いつの間にか瑠夏さんと雪乃さんもいた。
「これ、めちゃめちゃ偏見だと思うんだけど。なんか、お嬢様ってみんな顔整ってるよね。育ちの良さが顔に出るのかな」
「確かに。上品さとか雰囲気とか、そういうのも相まって人柄が形成されていくし。落ち着いて穏やかな表情をしているから、柔らかくて綺麗な顔立ちの人が多いのかもね」
「あーね。なるほど」
うんうんと頷いた瑠夏さんは、わたしの顔を見つめながら息を吐いた。