お嬢様、今宵は私の腕の中で。

「それに、悲しむ騎士って、誰のことですか」

「お嬢様……って呼ぶのは違うか。すずさん。あいつに何かされなかった?」



話題を変えた月夜さんは、わたしに触れることなくそっと呟いた。



「され……ました」

「何された?」

「……っ」



そんなの、恥ずかしくて言えない。

口ごもったわたしに、月夜さんはため息をついた。


「もうすぐ来ると思うから。何されたか、あいつにはちゃんと言って」

「来る、って」


いったい、誰が。

そう思って問いかけようとしたその時だった。

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