お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「そんなだから男たらしだと言われるんですよ」
「別に気にしてないわ。たらしだってなんだって、モテるということは女にとって最大の強みなの。それに、わたくしはもともとあなたと仲良くなりたいと思っていたんだから」
「達者な口だな」
謎だ。
わたしには到底理解できない。
この前はあんなに仲が悪かったのに、いったいどういうこと?
モテる人の考えはよく分からない。
2人とも、いったい何を考えているのだろう。
「ほんと、あなた面白いわね。冗談抜きにうちに来ない?わたくしのそばにいてちょうだいよ。自分でもびっくりしてるけど、今わたくし、自分のできる精一杯であなたのことを口説いているのよ」
「残念ながらできませんね」
「なびかないわね」
ケラケラと笑い声を上げる聖羅に唖然としてしまう。
いつもはこう、キュッと眉を寄せて怖い顔をしているのに。
笑うとあんなに雰囲気が違うなんて。
「わたくしじゃだめなのね」
「はい。私を口説けるのは、この世界にたった一人だけです」
「……というと?」
「私にはずっと想いを寄せている女性がいるのです」