お嬢様、今宵は私の腕の中で。
本当に別人なら、とんでもなく失礼なことをしてしまった。
ここは潔く退散したほうがよさそうだ。
「……そう、ですか。失礼しました」
ペコリと頭を下げてその場から離れようとしたその時だった。
「おーい。ひまり〜」
「おまたせ」
向かいから、上品な装いをした女性が手を振ってこちらに歩いてきた。
その瞬間、なぜだか分からないけれど、ドクッと大きく鼓動が鳴り響く。
彼女が走るたび、ピンクベージュの髪の毛がふわりと揺れる。
肌は雪のように白くて、太陽の光を浴びて儚ささえ纏っていた。
……綺麗な人だな。
九重に酷似しているこの男性にしろ、この女性にしろ。
綺麗と評するのがぴったりだと思う。