お嬢様、今宵は私の腕の中で。
◇
「……ごめんなさいね、いきなり抱きついたりして」
「いえ……」
甘味処で、団子を食べながら肩を落とす彼女を見つめる。
すると、九重似の男性が「どうぞ、遠慮なく食べて」とあんみつを手で示した。
「いえ……おかまいなく」
なんだろう、この状況は。
抱きしめてきた女性に「話がしたいの!」と半ば強引にこの甘味処に連れて行かれ、今に至る。
見る限り、危ない人たちではなさそうだけど。
知らない人からもらったものは口にしてはいけないと、きつく教えられてきたので食べるわけにはいかない。
もし毒でも入っていようものなら、大事になりかねない。
「それであの……あなた方はいったい」
あんみつから目を逸らして問いかけると、女性は「そうね。自己紹介しないとね」と言って串を置いた。
早くも団子がなくなりそうである。