お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「私は九重ひまり。となりにいる彼は私の夫の九重光月です」
……夫婦だったんだ。
まだ若く見えるから、てっきり恋人なのかと思っていた。
「それで……その。どうしてわたしの名前を?」
1番気になっていることを訊くと、彼女─────ひまりさんは切なげに目を細めた。
「今から話すこと、信じてくれる?」
「内容にも、よりますけど」
どんな話をされるのか怖い。
身構えていると、わたしの耳に届いたのは、わたしの予想を遥かに超える内容だった。
「私は、あなたの……すずの姉なの」