お嬢様、今宵は私の腕の中で。
そこでひまりさんは目を開けて、光をその瞳の中に宿した。
「後悔はしてない。こうして光月と一緒にいられて、心から良かったと思ってるの」
話がぶっ飛びすぎて、もはやこれは夢なのかもしれない。
うん、きっとそうだ。
……夢?
何かがひっかかって、首を傾げる。
『……いかないで。わたしを置いていかないで』
すうっと小さくなっていく背中。
滲んでいく視界にうつった背中。
『お姉ちゃん────!』
声にならない声が口から出て、それでも振り向くことなく去っていった彼女は。
「お姉、ちゃん……?」
思い出した。
今までどうして忘れていたのだろう、こんな大切なこと。
わたしは一人っ子じゃなかった。
ひまりお姉ちゃんが、いた。
何度も見る夢は、最愛の姉との別れの場面だったのだ。