お嬢様、今宵は私の腕の中で。
私の婚約者が決まったのは、そんなことを考え出した12歳の冬のことだった。
「ひまり。来月からお前は来栖家で生活してもらう」
突然放たれた言葉だけれど、今でも鮮明に覚えている。
「どうしてですか、お父様」
「お前の結婚相手が決まったからだよ。そろそろ中学生になるだろう。だから、その相手の家で一緒に暮らすんだ」
冗談じゃない、と思った。
なんで見ず知らずの、好きでもない人と結婚しないといけないんだ。
しかも、私はまだ大人じゃないんだよ?
「嫌です、お父様。私、まだ結婚なんてしたくないです」
「今はまだ結婚しない。だが、いずれ一緒になる相手なんだから、早めに仲良くしておいた方がいいだろう?」
「そんな……」
ショックで、どうしていいか分からなかった。
わたしと同じような立場の女の子は、こうやって好きでもない相手と結婚しているの?
そんなの、嫌だよ。