お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「ひまり様」
「ん?」
「一緒に歩きましょう」
仕事に随分慣れたのか、口調も落ち着いている光月。
おどおどしないこの穏やかな口調が、彼の本来の口調だ。
「でも、すずたちが」
「すず様のことは弟がしっかり見ています。だから心配ありません」
強く頷かれて、弟のことを信頼しているのだなと思った。
立ち上がって木陰から出る。
途端に夏の太陽がじりじりと肌を焼いた。
「せっかく向日葵畑にきたんですから。遠くから眺めているなんてもったいないです」
にっこりと口角を上げて笑う彼をじっと見つめる。
綺麗な笑顔だった。
真夏に咲く向日葵も敵わないくらい、素敵な笑顔だった。