お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「大きいね……」
太陽に向かって咲く向日葵は、近付いてみると想像以上に背丈が高かった。
素直に感心すると、横にいた光月がクスリと笑いをこぼす。
「どうしたの、九重」
「……ひまり様が、あまりに可愛らしくて」
こういうところ。
ふとした瞬間何気なく放たれる言葉が、私をときめかせる。
まだ13歳なのに、なんなんだこの余裕は。
そう何度思ったことだろう。
何も言えずに黙っていると、ふと右手をとられた。
「……っ」
「ひまり様」
手を引かれ、向日葵が鮮やかに彩る道を駆け出す。
頬に当たる風が心地よかった。
「……好き」
ふと、そんな言葉が唇からこぼれた。
ごく、自然に。
その瞬間、光月が振り返って私を見つめる。
いつのまにか、足は止まっていた。