お嬢様、今宵は私の腕の中で。



「ここはこっちを先に通して……あっ。すず、そこは」

「痛っ」


ピリッと鋭い痛みを指に感じる。

反射的に布から手を離すと、向かいの席でため息がこぼれた。


「本当に不器用なのね。困ったものだわ」

「だから言ったじゃん。裁縫下手だって……」

「ここまでとは思っていなかったんだもの。ちょっと……いや、かなり困惑してる」


はあ、と深く息を吐くお姉ちゃん。

頭を抱えて唸るお姉ちゃんは、「指、大丈夫?」とそこでようやく問いかけてきた。


「これが大丈夫なように見えますか、おねーさま」

「……見えないけど、姉として一応よ。ていうか、ここまで出来ないとむしろもう才能ね」

「わたしも以前思ったことあるもん」


自分だってどうしたらいいのか分からないのだ。

だから少しでも練習しようと、姉を頼ったというのに。


ここまで呆れられては、もう頑張ることなど到底出来ない。
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