お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「それで、晶さん。今日はどうして……?」
一応、用件を聞いてみた。
わざわざここに来るということは、何かあるのかもしれないと思って。
「んー、どうしたって言われても特に用事はないんだよね。ただ、九重さんがいなくてすずが暇してるかなーって思ってさ」
それで、来てくれたんだ。
じーんと心が温かくなる。
わたしが理想とする"友達"のかたちだったから。
特に用がなくても、なんとなく集まって、なんとなく一緒にいて、なんとなく別れる。
ずっと、そんな友達に憧れていた。
「ありがとう、晶さん……」
「え、お礼言われるようなことじゃないけど」
「とっても嬉しい」
いつの間にかお姉ちゃんが裁縫道具を片付けていて、代わりにティーのセットが置かれている。
「せっかく晶さんが来てくれたんだし、お茶にしましょう」
「そうだね」
「いいんですか!?うわ、楽しみ!」
苦難の裁縫練習は、晶さんの来訪によって、優雅なお茶のひとときへとあっという間に変わったのだった。