お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「月夜さんは、いったい何者なの……?」
この前は親族、って言ってたけれど。
いったい、誰の……?
「────月夜は俺の従兄弟だよ」
「いとこ……?」
視線を向けると「どーも。リツの従兄弟です」と月夜さんは笑った。
「ほら、九重家の繋がりって、なんか月が名前に入ることが多くて。気付かれるかなって思ってたんすけど、リツの名前を知らなかったんならしょうがないな」
たしかに、鈴月さんも光月さんも月夜さんも、みんな名前に月が入っている。
「俺も子供の頃何度かここにきたことがあるから、家のつくりは大体覚えてて」
「そんな、昔のことなのに……」
「俺、昔から記憶力はいいんすよね。ほら、俳優やってるくらいだし?」
台本の台詞とか、関係者の名前、スタッフさんの名前とか。
その世界を知らないわたしでも、俳優のお仕事は覚えることが沢山あるように思う。