お嬢様、今宵は私の腕の中で。
こうなったのは自業自得だって分かっているのに、頭の隅ではある一人に助けを求めてしまって。
神様、お願いばっかりでごめんなさい。
でもまだ死にたくないんです。
だから、どうかお願い……。
意識が朦朧とする中でそんなことを思う。
だんだん白くなっていく視界の中、意識を手放す寸前。
急に身体がふわりと浮いて、目の前に何度見てもくらりとする美貌が現れた。
「まったく、無茶ばかりするんですから」
低いのに安心する声が耳朶に響き、じわりと涙が浮かぶ。
「泣き虫ですね、お嬢様」
ああ。この人はいつだって。
こうやって妖艶な微笑を浮かべて。
──何度でも、わたしを助けてくれるんだ。