お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「にゃーん」
「みゃあ」
「あなたたち、今日から桜家の一員ね」
ふふっと笑ってみせると、白猫はしっぽをピンと立てて、足元にすり寄る。
その小さな身体を抱き上げると、「にゃー」と鳴き声を上げた。
「九重。大丈夫?」
なんとなく顔色が悪いような気がする九重に声をかけると、九重は小さく息を吐いて振り返った。
「ええ。大丈夫です」
「それにしては、顔色が悪いように見えるけど」
「池のせいですかね」
そうだった。
風邪ひかなければいいけれど。
心配の色を浮かべると、九重は先ほどの憂いを帯びた表情から一変、いつもの余裕のある微笑みを浮かべた。
「ありがとうございます、お嬢様。ご心配なく」
「大丈夫、なの?」
「はい。それよりも、お嬢様。お食事にいたしましょう」
白猫を抱いたままリムジンに乗る。
「にゃー」
「なに?嬉しいの?」
「にゃおーん」
ゴロゴロと喉を鳴らす白猫に笑いかけると、黒猫を膝の上に乗せていた九重が口を開いた。