お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「どうですか、お嬢様。初のファミレスは」
「なんかすごく新鮮ね。ドキドキしてる」
九重は余裕そうにしているけれど、初めてお父様とお母様の許可を得ずに来たんだもん。
わたしの心臓は今にも飛び出るんじゃないかってくらい鼓動を大きくしている。
「ねえ九重。お父様たちに言わずに来ちゃったけど、大丈夫なの?怒られたりしないかな」
「まあ、そのときはそのときです」
一緒に怒られましょう、とにっこり笑う九重。
わたしが以前言っていた『ふぁみれすに行ってみたい』という願望を覚えてくれていたことがとっても嬉しくて。
思わず頬がゆるんでしまう。
「お嬢様、何を食べますか。メニューをご覧になってください」
「メニュー?」
「お嬢様の右手の横にある、それです」
【menu】と金色で書かれている表紙をめくると、鮮やかな写真が目に飛び込んできた。
「うわぁ……!」
思わず感嘆の声が洩れる。
「九重!これって、どれでも好きなの頼んでいいの?」
「ええ、もちろんです。お好きなだけどうぞ」