お嬢様、今宵は私の腕の中で。
何がなんでも追い出されないようにしなくちゃ。
たとえ泣きついてでも、絶対に阻止してみせる!
そう胸に強く強く決意し、貴船とともにお父様の書斎へと向かう。
ノックを三回して、「お父様。すずです」と部屋の中に呼びかけた。
中から「入れ」と太い声が聞こえてくる。
わたしは深呼吸をして、ドアを開けて中に入った。
前の椅子には、お父様が腕を組んで座っていて、その隣ではお母様がニコニコと微笑みながら立っていた。
今はお母様の笑みですら、裏がありそうでとても怖く感じる。
やはり両親の前というのはどうしても威圧感が拭えなく、途端に自信は風船のように萎んで、身体はすっかり萎縮してしまう。
視線を彷徨わせておどおどしているわたしに、お父様がソファーへ座るよう促した。