文字だけの彼女。
テイクアウトした注文も届き
そろそろ彼が到着する時間だ。

私は会計を済ませ
テイクアウト片手に店を出た。


外は生憎の小雨。


コンプレックスの癖毛を隠す為に
折角、ヘアアイロンを当てて
せめてもの足掻きか
1番ベストな状態で会いたかった。

雨が憎い。

そんな私の感情を無視するように
無常にも小雨が降る。

その時に彼から連絡が来た。

「駅に着きました。」


私は緊張が最高潮に達した。
震える手で、メッセージを打ち込み
現在地の喫茶店の場所を説明し
彼に来てもらうように頼んだ。

人通りは決して多くないが
モノレールを降りる人達が次々と歩いてくる。

彼を探そうと必死だったが
視力が悪い私にとっては
暗闇での人探しは予想以上に大変で…

緊張のあまり顔を上げることさえ
苦難だった。

そして彼とメッセージを交わしながら
喫茶店の前で待っていると…
遠目から彼らしき人が現れた。


が、ここで私の悪い癖が出た。

気付いてない振りをしてしまい
彼からの声掛けを待ってしまった。



「おまたせ。遅くなってごめんね。」

間違いなく彼の声だった。

が、私は顔を上げることすら
出来ずに固まっていると…

不意に頭をポンポンと二度、優しく撫でられた。


彼と確信しているが、顔を上げれない。
これは照れなのか何なのか分からない感情。

恋をしているのは確かだが
言葉が出ないのは初めてだった。







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