文字だけの彼女。
一体、どれ程の時間
私は固まっていたのだろうか…。

ふと顔を上げると
彼の優しい笑いかける顔が見えた。

そして絞り出した様な声で

「初めまして。」

この一言だけ、何とか言えた。

そして手元に抱えた沢山の荷物を
彼はスっと手に取り

「行こっか。」

と、慣れた口調で言い放ち歩き出した。


そこからは記憶が無い。
しかし、彼のリードで他愛も無い話をしながら
数百メートル先のネオン街に向かった。

時折、彼の顔を見るが
彼は真っ直ぐに前を見て、迷いは無さそうだった。

緊張と赤面の私に気を使って
スマートにエスコートしてくれたのだろう。


ネオン街に着き

「どこがいい?」

と、選択肢を彼は投げかけた。

勿論、このネオン街に来るのは初めてなので
右も左も分からない事だらけ。

無言で立ち止まる私を
彼はそっと引き寄せ
1番近くのファッションホテルへと入った。

「部屋、どうしよっか?」

ここでも優しく
最後の判断を、彼は私に委ねてくれた。

「どこでもいい。」

特にこだわりは無いので
少しでも可愛らしく
会えた事の嬉しさと共に伝えたかったのだが
まだ、緊張が解けずに無愛想な返事になった。

それも理解してくれたのか
彼は私の手を引き
ガレージインの一部屋を選び
緊張を解くように、エスコートしてくれた。


そうして、私と彼は
ファッションホテルの一室へと消えた。

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