文字だけの彼女。
シャワーを浴び
どれだけの時間をソファーで過ごしただろう。

他愛ない話や初体験の話。
普通に喫茶店感覚で話をした。

その時、不意に彼の手が私の手に触れる。

少し男性恐怖症気味な私がグッと固まると
彼の暖かい手で、また頭をポンポンとされた。

緊張は解けない物の...
何故か彼にはとても安心した。

そして不意に彼に抱きしめられる。

このまま抱かれるのかな?

と、少し期待をした所で
一向に彼からは手を出して来ない。



何度ハグを繰り返しただろう。


数え切れないハグを繰り返し
彼は寂しそうに自分の事を話し出した。

暗い雰囲気にならないように
手を握ったり、ハグをしたり
頭を撫でられながら。

めったに自分の事は話さないと
前々から彼は言っていたので
私はとても、嬉しかった。


そして、彼の話も終わり
導かれるようにベッドへ...。

自然と腕枕をされ
彼に身を預けながらも私の鼓動は
全身が波打つように激しく鳴っていた。

彼からそっと抱きしめられる。

それは...
今までの感じた事の無い温かさだった。

孤独そうな彼を私からもそっと抱きしめて
お互いの体温を確かめ合うように
キツく何度も抱き合った。

そしてお互いの身体の体温を
めいっぱい感じていると、彼がポツリと話し出した。

「今日ね、本当は...ギリギリまで来るかどうか悩んだ。
会いたいのは確かだけど、本当に会っても良いか...。
それに、こんな所で初対面で会うのって変でしょ?」

私は彼の言葉を素直に飲み込み
「変なの。」と、しか言えなかった。

しかし彼は言葉を続け

「もしも今日...エッチしちゃったら
次は会えない気がする。だから、我慢する。」

そんな彼の決意と
男性恐怖症の私に対する優しさに
クスッと笑って...また抱き合った。

拍子抜けな気もしたが
彼らしい思いを抱えて来てくれた事が
とても嬉しく、少し涙ぐんだ。

察せられないように彼に背を向ける瞬間
彼も少し瞳が潤んでいた。


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