闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
(たま)くしげ()けまく()しき可惜夜(あたらよ)衣手離(ころもでか) れてひとりかも()む」


 二枚に分かれて書かれた文字。

 読めるのか、元々覚えていたのかは分からないけれど、櫂人はなめらかに歌う。

 その声はよどみなくて、まるで昔の貴族が歌っているような……そんな雅さがあった。

 つい、聞き惚れてしまう。


「意味は、明けてゆくのがもったいないような良い夜に、お前と遠く離れて一人で寝ないといけないのだろうか……」

「それ……」


 櫂人は貝殻をローテーブルに置きなおし、私を真っ直ぐに見る。

 その視線は怖いくらい真剣で、黒い瞳には熱が宿っていた。

 櫂人の右手が伸ばされ、私の頬を撫でる。
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