闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 こんな夜に一人で寝たくないと思っているのは私もだ。

 櫂人と離れたくないということもあるけれど、さっきヴァンピールに襲われたときの恐怖。

 夜一人でいたら、あの瞬間のことを思い出してしまうかもしれないから。

 真人さんがいれば、彼はきっと何も聞かず寄り添ってくれる。

 でも今夜真人さんは帰って来ない。

 夜の不安は確かにあった。


 ……もしかして、そういう意味でも離したくないと言ってくれているのかな?

 それは聞かなければ分からないことだったけれど、欲を宿らせるその瞳には確かに愛があった。


「一目惚れして再会を願っていた女が俺の“唯一”だったとか……運命としか思えねぇよ。恋華、お前が欲しくて欲しくてたまらない」

「っ!」

「帰るなよ」

「……うん」
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