闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「恋華、お前が教えてくれたんだ」

「私が?」


 どういうことだろうと首をひねると、掴まれていた手がゆっくりと引かれて腰に櫂人の手が回される。

 座っている櫂人に腰の辺りを抱き締められる形になって、私のお腹の辺りに彼の頭がある状態。

 抱き締められているのもそうだけれど、この体勢自体も何だか恥ずかしくて鼓動が早まっていく。


「恋華……俺の“唯一”。今日俺は、吸血鬼にとって“唯一”がどんなものなのかを知った。狂おしいほどに求めて、全てが欲しいと思ってしまう存在」

「っ!」


 見上げる瞳に宿る熱が、炎になって揺らめいているかのよう。

 それくらい熱い眼差しだった。

 でも、その炎は燃え盛る前に優し気な揺らめきに変わる。

 愛しいと、言われているような気がした。
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