闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「……でもな、理性は無くならない。例え“唯一”を見つけても、その存在をどんなに求めていても、ちゃんと考えられる理性はある」


 そう言って櫂人は私の腰から手を離し、今度は両手で頬を包み込んだ。

 まっすぐ、優しく甘い熱が向けられている。


「理性があるなら、母さんが黙って俺と父さんを捨てていなくなるわけがない。あの人は情に厚い人だから」


 だから今は、信じられるのだという。

 きっと、もっと別の事情があったんだろうって。


「恋華……お前は俺の“唯一”で、一目惚れした女で、そして俺の心を救ってくれた特別な女だ」

「櫂人……」

「お前以外はいらない。お前だけが欲しい」


 ()うように、望まれる。

 瞳に宿った熱が声にも影響しているのか、櫂人の声は甘く響いた。
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