闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「恋華……お前のすべてを俺にくれ」


 ぐっと近付いて来る艶めいた表情。

 欲の炎をちらつかせた瞳に見つめられて、甘く響く言葉を紡ぐ唇に吸い寄せられる。

 私も櫂人の肩に手を置いて、触れたいという思いのまま近付く。


「うん、いいよ……櫂人に私の全部、あげる」


 囁くように告げて、唇が触れ合った。

 緊張していたのがウソのように、今はお互いがお互いを欲している。

 柔らかな唇は優しくついばみ、櫂人の手が私の髪を撫でる。

 二人の間にある隙間すらなくしたくて、ぎゅうっと抱き合った。
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