闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 一斉に顔を上げた彼らに、櫂人は告げる。


「まずは、コイツの顔覚えとけ。俺の大事な女だ。手ぇ出すんじゃねぇぞ?」


 冷たくも見える眼差しに、思わずゾクリと心が震えた。

 《朱闇会》の総長としての櫂人の顔。

 怖いとも思ったけれど、これも櫂人の一面だと思うとなぜだかドキドキした。


「で、こいつの生死に関わる大事な薬が無くなった。茜渚街にある可能性が一番高い。何としてでも探し出せ!」

『おっす!』


 野太い声が重なり、それを受け櫂人は頷いた。

 そうして薬の詳細を話すと、みんな早速探しに散っていってくれる。

 有難いけれど、いいのかなと思ってしまう。

 彼らにとって私は新参者みたいなものなのに、と。
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