闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「……」


 櫂人は無言で隣に座って、自然な仕草で私の肩を抱く。


「……恋華、一応……念のために聞いておきたいんだけどな?」

「ん、何?」


 ためらいがちな言葉に何を聞かれるんだろうとちょっと身構える。


「もし、薬が見つからなくて万が一のことになったとき……」

「……」

「お前を……吸血鬼にしても良いか?」

「……私を吸血鬼に?」


 想像もしていなかった言葉にただただ驚いた。

 どういうことなのかと聞き返す前に、櫂人は説明してくれる。


「吸血鬼は死にかけた人間と遭遇し、その人間が吸血鬼になってでも生き延びたいと意思を示した場合のみ自分の血を入れてその人間を吸血鬼にすることが許されてるんだ」

 だから、万が一のときは……と。
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