闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 ポンポンされて、嬉しくても恥ずかしくてはにかむ。

 するとスッと櫂人の綺麗な顔が近付いて来て――。

 チュッ

 あ、睫毛長いな……と思った瞬間唇に柔らかいものが触れた。


「っ⁉ か、櫂人⁉」


 白昼堂々、しかも私が住んでいるマンションの前でキスなんて。

 抗議の声を上げたけれど、櫂人は甘ったるい微笑みを向けるだけ。


「可愛かったから、したくなった」

「もう!」

「いいだろ? 今晩は一緒にいられないんだ。本当ならもっと濃厚なのして別れてぇんだけど」

「⁉ 分かった、大丈夫、今ので十分」


 あまりの恥ずかしさに早口で告げると、「くはっ」と笑われてしまう。

 そのまま笑いをかみ殺した表情をして、櫂人は「じゃあ、明日の朝な」ともう一度キスをして去って行った。


「ホントに、もう……」


 マンションの住人に見られているんじゃないかと恥ずかしい半面、どこか喜んでいる自分もいてちょっと困った。
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